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油を交換すべきタイミングは「時間」だけで決めていいのか?

産業機械や油圧設備では、潤滑油や作動油を「半年ごと」「稼働○時間ごと」といった一定の周期で交換する方法が広く採用されています。

交換時期が明確なため管理しやすく、交換忘れを防げるというメリットがあります。

しかし、同じ設備、同じ種類の油を使用していても、負荷や温度、稼働時間、周辺環境、水分や異物の混入状況などによって、油の状態は必ずしも同じではありません。

それでは、油の交換時期を「前回交換してからの時間」だけで判断してよいのでしょうか。 今回は、油の実際の状態を確認しながら保全を行う状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)という考え方から、潤滑油・作動油の交換時期について考えてみます。

1. 定期交換で起こる2つの「もったいない」

一定期間ごとに油を交換する方法はシンプルですが、設備の実際の状態にかかわらず交換時期が決まります。

そのため、一つ目の「もったいない」が発生します。

それは、まだ使用できる油を交換してしまうことです。

例えば交換周期を6か月としていても、その期間の設備稼働率が低く、油の状態にも問題がなければ、交換時点でも十分に使用できる可能性があります。

油を交換すれば、油そのものの購入費だけでなく、交換作業、廃油処理、設備停止なども発生します。

一方、逆のケースもあります。

これが二つ目の「もったいない」、つまり油や設備に異常の兆候が出ているにもかかわらず、次の定期交換まで使用を続けてしまうことです。

高温、多湿、粉じんの多い環境などでは、想定よりも早く油の状態が変化する場合があります。また、設備内部で摩耗が進行すれば、油中の摩耗粉にも変化が現れる可能性があります。 「交換周期を守っている」ことと、「油と設備が正常な状態である」ことは、必ずしも同じではありません。

2. 油そのものの劣化と「汚れ」を分けて考える

油の状態を判断するときには、まず油そのものの状態油に混入した汚染物を分けて考える必要があります。

潤滑油や作動油は使用によって状態が変化しますが、それとは別に、外部から侵入する固形粒子や水分、設備内部から発生する摩耗粉なども油中に存在します。

実際、油そのものの寿命だけではなく、粒子や水分、劣化生成物などの汚染によって油を継続使用できなくなるケースもあります。

そのため、

「油が黒くなったから交換する」

「半年経ったから交換する」 という一つの条件だけで判断するのではなく、油と設備の状態を複数の情報から把握することが重要になります。

3. 油から何が分かるのか?

使用中の油は、単なる消耗品ではありません。

油を調べることで、大きく分けて次の3つの情報を得ることができます。

① 油そのものの状態
粘度や酸化などを確認することで、油そのものにどのような変化が起きているかを把握します。

② 汚染の状態
油中に混入した固形粒子や水分などを確認します。油圧作動油の固形粒子汚染については、ISO 4406による汚染度のコード化も利用されています。

③ 設備の状態
油中に発生する摩耗粉などを監視することで、設備内部で起きている変化を知る手掛かりになります。

実際の使用油分析でも、粘度、粒子数、摩耗や汚染に関する複数の情報を組み合わせて設備や潤滑状態を評価する方法が用いられています。 つまり、油を見ることは、油の健康診断であると同時に、設備の健康診断にもなり得るということです。

4. 「今の値」だけではなく「変化」を見る

状態基準保全を考えるうえでもう一つ重要なのが、測定値のトレンド(推移)です。

例えば、ある設備の油中粒子数を定期的に測定し、通常はほぼ一定の範囲で推移していたとします。

その値が少しずつ増え始めた場合はどうでしょうか。

まだ管理基準を超えていなかったとしても、設備や油の状態に何らかの変化が起き始めている可能性があります。

使用油分析では、このような摩耗や汚染状態のトレンドを把握することも重要な目的の一つです。

さらにオンラインセンサーを使用すれば、一定間隔で採油して分析する方法では捉えにくかった短時間の変化も監視しやすくなります。インテクノスでも、潤滑油・作動油の状態監視にオンラインセンサーを活用し、測定データを継続的に蓄積・分析する考え方をご紹介しています。

重要なのは、一つの測定値だけを見て「正常」「異常」と判断することではありません。その設備の通常状態を知り、そこからどのように変化しているかを見ることが、状態監視では重要になります。

5. 定期交換をやめればよい、という話ではない

ここまで読むと、「それなら定期交換をやめて、すべて状態基準にすればよい」と思われるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

設備メーカーが指定する交換周期や、これまで蓄積してきた保全実績は、設備を安全に運用するための重要な基準です。

状態基準保全は、それらを単純に置き換えるものではなく、「時間」という判断材料に「実際の状態」という情報を加える考え方と捉えると分かりやすいでしょう。

まず定期的な交換・点検を基本としながら状態データを蓄積し、その設備で「正常なときにどの程度の値なのか」「交換前にはどのような変化が現れるのか」を把握していく。 データが蓄積されれば、設備ごとに、より実態に合った保全方法を検討できるようになります。

まとめ

潤滑油や作動油を一定期間ごとに交換する方法は、シンプルで管理しやすい保全方法です。

一方で、設備の使われ方や周辺環境によって油の状態は異なるため、「前回交換してから何時間経過したか」という情報だけでは、油や設備の実際の状態までは分かりません。

そこで重要になるのが、

「いつ交換したか」だけでなく、「今、油と設備がどのような状態なのか」を見ることです。

油中の粒子、摩耗粉、水分、粘度などを測定し、その変化を継続して確認することで、不要な油交換を抑えながら、設備異常の兆候を早期に捉えられる可能性があります。

油を単なる「定期的に交換する消耗品」として見るのではなく、設備内部の状態を伝えてくれる情報源として活用する。

この考え方が、状態基準保全への第一歩です。

インテクノスでは、作動油・潤滑油の汚染度測定や摩耗粉監視、オンラインでの状態監視など、設備や目的に応じたオイル管理をご提案しています。 「現在の交換周期が適切なのか確認したい」「油の状態を数値で管理したい」「設備の状態監視を始めたい」といった課題がございましたら、こちらからお気軽にご相談ください。

PPSビジネスユニット 齋藤圭介

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