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油圧機器の故障を減らすために(ISO 21018-4)

油圧機器のトラブルというと、ポンプやバルブなどの部品そのものに原因があると考えがちです。しかし油圧関連の技術文献においては、部品の加工・組立精度以外に繰り返し登場するキーワードがあります。それが「作動油の汚染」です。

油圧システムにとって作動油は、単に力を伝える液体ではありません。摺動部を潤滑し、発生した熱を運び、精密部品を正常に動作させる重要な役割を担っています。そのため、作動油の状態が悪化すると、システム全体の信頼性にも影響します。 今回は、油圧機器の故障と作動油中の粒子汚染との関係、そして汚染状態を監視するうえで重要となる国際規格「ISO 21018-4」について紹介します。

油圧機器の故障と「見えない汚れ」

油圧システムの故障原因として、作動油の汚染は非常に重要な要素の一つとされています。

実際には、故障には設計、配管、シリンダ、シール、温度管理などさまざまな原因があり、すべてを汚染だけで説明することはできません。

それでも、作動油中の固形粒子がポンプ、バルブ、シールなどに悪影響を及ぼすことは重要なポイントです。

特に近年の油圧機器は、高圧化するとともに部品の加工精度も高くなっています。精密な制御を行うバルブなどでは内部の隙間が非常に小さいため、人間の目では確認できない微細な粒子でも問題になる場合があります。

粒子が摺動部分に入り込むと表面を摩耗させます。そして摩耗によって新しい金属粒子が発生し、その粒子がさらに別の部分を摩耗させるという悪循環につながります。 つまり、油の中の小さな異物が、時間をかけて大きな故障へ成長していく可能性があるのです。

汚染によってどのような故障が起こるのでしょうか

作動油に混入する代表的な固形汚染物質には、外部から侵入する砂やほこり、組立時に残った異物、そして機器内部の摩耗によって発生する金属粉などがあります。

これらが循環すると、バルブの動作不良、ポンプの摩耗、内部漏れの増加などを引き起こす可能性があります。

例えば、バルブ内部の精密な隙間に粒子が入り込めば、スプールなどの動きを妨げることがあります。また、摺動面の摩耗によって隙間が広がれば、本来圧力を維持するために必要な油が内部で漏れるようになります。

その結果、「動作が遅くなった」「設定した圧力まで上がらない」「動きが不安定になった」「油温が以前より高くなった」といった症状として現れることがあります。

ここで注意したいのは、故障した部品だけを交換しても根本原因が残っている可能性があることです。

例えば、汚染された作動油がシステム内に残った状態で新しいポンプやバルブに交換すると、新品部品も同じ汚染環境にさらされます。故障原因を取り除かず、結果だけを交換していることになるからです。

そこで重要になるのが「作動油がどの程度汚れているのか」を把握することです。

ISO 21018-4とは?

このような粒子汚染の監視に関係する国際規格の一つが「ISO 21018-4」です。

正式には、油圧システムの流体中に存在する粒子汚染レベルを監視するための規格で、その中でもPart 4は「光遮蔽法(Light Extinction Technique)」を扱っています。

光遮蔽法では、流体に光を当て、その光路を粒子が通過した際に生じる光量の変化を利用して粒子を検出します。これによって、作動油中に存在する粒子を一定の粒径区分ごとに計測できます。

ISO 21018-4では、この方法をオンライン、つまり油圧システムに接続して測定する場合だけでなく、容器に採取した試料をオフラインで測定する場合についても対象としています。

規格では単に「粒子を測ればよい」としているわけではありません。測定機器の校正や正常に動作していることを確認するための手順についても定めています。

なぜなら、汚染管理では測定値の信頼性そのものが非常に重要だからです。

一回の測定値より「変化」を見ることが重要です

作動油を管理する際、「現在の清浄度はいくつか」という数字だけに注目してしまうことがあります。しかし設備保全という視点では、継続的な変化を見ることに大きな意味があります。

例えば、通常は安定していた粒子数が突然増加した場合、外部から異物が侵入した可能性があります。一方、時間とともに徐々に粒子数が増えているのであれば、内部部品の摩耗が進行している可能性も考えられます。

フィルタ交換やフラッシングを行った後に粒子数が減少しているかを見ることで、対策の効果を確認することもできます。

ISO 21018-4が想定する用途にも、油圧システム全体の清浄度監視だけでなく、フラッシング作業の進行確認や試験設備などの監視が含まれています。

その意味では粒子計測は、単なる「油の汚れ検査」ではなく、設備内部で起きている変化を把握するための状態監視手段と考えることができます。

オンライン監視のメリット

従来の作動油分析では、設備から油を採取して容器に入れ、分析する方法が広く利用されてきました。しかしサンプリング作業では、容器や採取口、周囲の環境などから異物が混入する可能性があります。

そこで、システムに測定機器を接続し、作動油を直接監視するオンライン方式が活用されています。

オンライン監視の大きなメリットは、設備を運転しながら状態の変化を追跡できることです。

定期的なサンプル分析が「健康診断」だとすれば、オンライン監視は「体温や心拍を継続的に測るモニター」に近いイメージです。

異常値そのものだけではなく、普段の状態からどの程度変化したかを見ることで、設備異常の兆候をより早い段階で発見できる可能性があります。

大切なのは「壊れてから直す」からの転換です

油圧設備の保全では、ポンプが壊れたら交換する、バルブが動かなくなったら修理するといった事後保全だけでは、突発停止を十分に減らせません。

重要なのは、なぜ故障したのかを考えることです。

作動油中の粒子、フィルタの状態、水分、空気の混入、油温、異常圧力、配管やシールの状態などを総合的に確認し、故障につながる条件を早い段階で取り除くことが必要です。

特に粒子汚染については、「目で見てきれいだから問題ない」と判断することはできません。精密な油圧機器に影響する粒子の多くは非常に小さいためです。

だからこそ、ISO 21018-4のような標準化された測定方法を活用して、見えない汚染を数値として把握する意味があります。 油圧機器の信頼性向上というと、高性能な部品への交換に目が向きがちです。しかし、その部品の中を流れている作動油の状態を知ることも同様に重要なのです。

「故障した部品を見る」だけではなく、「故障する前の油の変化を見る」。

この考え方を日常の保全活動に取り入れることが、突発故障や不要な部品交換を減らし、設備を長く安定して使用するための第一歩になるのではないでしょうか。

インテクノス・ジャパンは、専門的なノウハウを要するオンライン監視の確立や関連規格の活用をお支えしております。ご関心をお寄せいただけましたら、こちらのフォームよりお気軽にご相談ください。

高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

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