当ウェブサイトではサイトの利便性向上を目的にクッキー(Cookie)を使用しています。 サイトを閲覧いただくには、クッキーの使用に同意いただく必要があります。 詳細については「クッキーポリシー」をご覧ください。

intechno clean technology

ALL TAGS

データセンターにおける環境・汚染制御

データセンターという環境では、サーバーやネットワーク機器が常に高い信頼性で稼働し続ける必要があります。しかし、空気中の湿度や微粒子、化学物質(ガス)などの汚染要因が、電子機器に大きな影響を及ぼすことがあります。そのため、安定した稼働を確保するには、適切な環境・汚染制御が欠かせません。

目次

  1. 湿度や微粒子、ガス汚染の影響
  2. 腐食速度と評価基準
  3. 環境モニタリングの方法
  4. 主な制御対策
  5. 新しい技術動向とスマート管理
  6. 環境・汚染制御がもたらす経済効果
  7. まとめ

湿度や微粒子、ガス汚染の影響

湿度が高い環境では、マザーボードや回路基板などに微細な粒子が付着し、水分を吸収することで導電性が変化します。これが原因でショートを引き起こしたり、機器の動作不良につながることがあります。

また、空気中の微粒子や塵は、機器の冷却ファンや排熱経路を詰まらせることで冷却効率を低下させ、部品の過熱や劣化を引き起こします。さらに、金属部品の絶縁性が失われることで、誤動作や故障が発生する可能性もあります。

化学汚染も深刻な影響を与えます。屋外や工場などから侵入する腐食性ガス(例:硫黄化合物、塩素化合物など)は、銅や銀などの電子部品を化学的に腐食させます。腐食が進むと、部品の機能が損なわれ、システム全体の信頼性を脅かします。

腐食速度と評価基準

環境・汚染制御の必要性を判断する指標として、「腐食速度」が用いられます。これは、銅や銀などの試験片を空間に一定期間露出させ、その腐食の進行具合を計測する方法です。

例えば、銅の腐食速度(厚さ)が月あたり300オングストローム(Å)以下であれば、一般的には問題ないとされています。これを超える場合には、対策が必要とされます。銀については月あたり200Å以下が望ましいとされます。

この腐食速度をもとに、環境レベルを次のように分類することができます(ANSI/ISA-71.04-2013に基づく)。

G1(軽度):腐食の影響が少なく、通常の運用で問題ありません。

G2(中程度):腐食が観察され、長期的には信頼性に影響を与える可能性があります。

G3(過酷):深刻な腐食リスクがあり、特別な対策が必要です。

GX(極端):通常の設備では対応できないレベルで、特別設計の装置が求められます。

環境モニタリングの方法

データセンターでは、環境汚染の状況を常時監視するために、さまざまなモニタリング技術が活用されています。

最も基本的な方法は、銅や銀の試験片を一定期間(通常は30日間)施設内に設置し、腐食速度を測定することです。これにより、長期的な傾向を把握することができます。

また、リアルタイムで腐食性ガスや微粒子の濃度を測定できる専用のセンサー装置も開発されており、短期間での環境変化にも迅速に対応できるようになっています。

主な制御対策

データセンターにおける環境・汚染制御では、以下の3点が特に重要とされています。

湿度と温度の管理

相対湿度(RH)は、35〜45%が理想とされており、60%を超えると腐食リスクが高まります。また、室温は18〜24°Cを維持するのが望ましいです。これにより、機器の過熱や結露を防ぎます。

空気の清浄化

微粒子を除去するための高性能フィルターやHEPAフィルターなどを導入することで、空気中の塵埃を低減し、回路の障害を防止します。

ガス除去装置の導入

化学汚染に対しては、腐食性ガスを除去するための専用ろ過装置が有効です。そのような装置は通常、吸着材や化学反応を用いてガス成分を捕捉・中和する化学吸着という技術に基づいています。

新しい技術動向とスマート管理

最新の環境制御技術では、IoTやAIと連携したスマート管理が注目されています。これにより、外部環境の変化や内部の空気質の状態に応じて、装置が自動的に動作モードを切り替えたり、フィルター交換を予測するなど、メンテナンスの効率化と信頼性の向上が図られています。

環境・汚染制御がもたらす経済効果

データセンターにおける環境・汚染制御は、単に設備を守るだけでなく、ビジネスの継続性に直結する重要な施策です。

ダウンタイムの防止:設備故障やメンテナンスによる停止時間を削減することで、サービスの信頼性を高め、顧客満足度を向上させます。

運用コストの最適化:環境・汚染制御によって機器の寿命を延ばし、交換や修理の頻度を減らすことで、トータルコストを抑えることができます。

Tier格付けの維持:データセンターの格付け(Tier 1〜4)では、安定稼働時間(アップタイム)が重視されます。環境・汚染制御はその基盤となります。

法規制や業界標準への対応:汚染要因に起因する故障を防止することは、国際的な規格(IEC、ANSI/ISAなど)への準拠にもつながります。

まとめ

データセンターという環境の信頼性を支えるためには、空気中の湿度・微粒子・化学ガスといった汚染要因に常に目を配る必要があります。これらの要素は、機器の性能や寿命に直接的な影響を与えるからです。

腐食速度の測定や環境モニタリングを通じて現状を把握し、必要に応じて湿度管理・空気清浄・ガス除去などの対策を講じることで、システム全体の安定稼働を実現することができます。

さらに、最新のスマート技術を取り入れることで、省エネルギー化とメンテナンス効率の向上が期待されます。環境・汚染制御は、単なるコストではなく、長期的な投資として考えるべき重要な領域です。

高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

Inspiring technology solutions