技術情報
2026.09.25
クリーンルームをはじめとした清浄作業環境では、空気中に浮遊する微粒子の濃度を管理することが、要求される場合があります。
その代表的な基準となるのがISO 14644シリーズなどの規格です。なかでもISO 14644-1とISO 14644-2は、空気清浄度を評価・維持するための基本となります。 ここで注意したいのは、「清浄度を測定すること」と「清浄度を継続的に監視すること」は同じではないという点です。
ISO 14644-1は、空気中の浮遊粒子濃度によってクリーンルームやクリーンゾーンの清浄度を分類する規格です。
光散乱式の気中パーティクルカウンターを用い、規定された粒径以上の粒子濃度を測定し、ISO Class 1~9などの清浄度クラスに適合しているかを評価します。規格で分類対象となる粒径範囲は、基本的に0.1~5 µmです。
また、測定点数は部屋の面積に応じて設定され、それぞれの区画を代表する位置で測定します。必要に応じて、浮遊粒子によるリスクが高い重要箇所を追加測定することも考慮されます。
この測定によって、「クリーンルームが要求されたISOクラスを満たしている」ことを確認できます。
しかし、これはあくまでも測定した時点における清浄度の確認です。
製造設備の稼働、人の出入り、材料の搬入、清掃の実施、空調設備の変化などによって、実際の粒子濃度は時間とともに変動します。 そこで重要になるのがISO 14644-2です。
ISO 14644-2では、要求される空気清浄度が維持されていることを確認するため、リスク評価に基づいたモニタリング計画を策定・実施・維持することが求められています。
重要なのは、単純に「パーティクルカウンターを置けばよい」という考え方ではないことです。
例えば、
・製品が露出する工程
・発塵する可能性が高い設備の周辺
・作業者が頻繁に移動する場所
・清浄度異常が製品品質に大きく影響する場所
・空調や気流の変化を受けやすい場所
などを考え、どこにリスクが存在するのかを把握したうえで測定位置や頻度を決めることが重要です。 つまり、ISO 14644-1の清浄度分類のための測定点と、日常モニタリングの測定点が必ずしも同じになるとは限りません。
モニタリングというと、固定式パーティクルカウンターによる24時間連続測定をイメージするかもしれません。
しかし、ISO 14644-2におけるモニタリングは、連続、順次、定期的な測定などを含む考え方です。重要なのは、製造工程や清浄度リスクに応じて適切な方法を選択し、その理由を説明できることです。
例えば、重要工程では固定式パーティクルカウンターによる連続監視を行い、比較的リスクの低い場所ではポータブル型パーティクルカウンターによる定期測定を行う、といった組み合わせも考えられます。 さらに、粒子濃度だけを見るのではなく、必要に応じて室間差圧、風量・風速、温度、湿度など、空気清浄度に影響するパラメータを組み合わせることで、異常の原因をより早く把握できます。
モニタリングの大きなメリットは、異常が発生してから気付くのではなく、正常な状態からの変化を捉えられることです。
例えば、規定値を超える前から粒子数が徐々に増加している場合、設備の汚れ、フィルター性能の変化、作業方法の変化などが起きている可能性があります。
測定結果を単発の合否判定として扱うのではなく、時系列で蓄積し、トレンドとして評価することが清浄度管理では重要になります。 また、使用するパーティクルカウンターについても、適切な選定と校正が必要です。ISO 14644-2では、気中パーティクルカウンターの校正について、ISO 21501-4に基づく考え方が示されています。
ISO 14644-2では、ISO 14644-1に基づく定期的な清浄度分類を原則として年1回実施し、リスク評価や十分なモニタリング実績などに基づいて、その頻度を延長できる考え方が示されています。
これは、年に一度測定すれば十分という意味ではありません。
ISO 14644-1による「要求される清浄度クラスへの適合確認」と、ISO 14644-2による「その状態が維持されていることの監視」を組み合わせて考えることが重要です。
清浄度管理の目的は、パーティクルカウンターで数値を測ることではありません。
「どこに清浄度リスクがあるのか」「どの変化を捉えるべきなのか」「異常をどれだけ早く発見できるのか」を考え、製造工程に適したモニタリングの仕組みを構築することで、定期的な“点”の測定から、時間的・空間的な変化を捉える“状態監視”に移行できます。
ISO 14644-1とISO 14644-2の考え方を組み合わせて運用することが、安定した空気清浄度を維持するための第一歩と言えるでしょう。 インテクノスのコンサルティングは、クリーンルームなどの環境管理が要求され得る製造領域について、製品・工程のリスクアセスメントを起点とした本質的な清浄度管理の考え方を提供しています。
汚染・異物による欠陥や歩留まりに関する課題などがございました際は、こちらからお気軽にご相談ください。
高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―




