技術情報
2026.10.09
Part1では、ISO Class 8クリーンルームにおける粒子径ごとの沈降速度データを紹介しました。Part2では、Whyte氏とAgricola氏がこのデータをもとに「表面堆積」と「機械換気」それぞれの寄与率をどのように算出したのか、その手法を解説します。
著者らは、全く異なる2つのアプローチで計算を行い、両者が一致する結果を得たと報告しています。これは分析手法そのものの妥当性を裏付ける重要なポイントだと論文は位置づけています。
1つ目の手法として、著者らは「等価仮想換気回数(equivalent virtual air change rate)」という概念を用いています。これは、表面堆積によって生じる空気中粒子濃度の低下と「同じだけの濃度低下」をもたらす、仮想的な換気回数を算出するというものです。この仮想換気回数を、実際の機械換気による換気回数と比較することで、堆積と換気それぞれの寄与率を百分率として求められると説明されています。
この手法により算出された、ISO Class 8クリーンルーム(天井高2.7m、換気回数 約13回/時)における結果として、論文は以下の数値を報告しています。
| 累積粒子径(µm) | クリーンルーム内での堆積割合(%) |
| 0.3 | 0.3 |
| 0.5 | 0.65 |
| 5 | 23 |
| 10 | 48 |
| 25 | 81 |
| 40 | 90 |
| 50 | 93 |
| 100 | 98 |
著者らは、0.3µmや0.5µmといった微小粒子はほとんどが換気で除去される一方、10µm付近で堆積と換気の寄与がほぼ拮抗し、40µm以上ではむしろ堆積が支配的になると述べています。
2つ目の手法として、粒子濃度が特定の割合(論文では90%)まで減衰するのに要する時間を、「表面堆積のみ」の場合と「機械換気のみ」の場合とでそれぞれ算出し、比較する方法が紹介されています。堆積による減衰は指数関数的な微分方程式から、換気による減衰も同様の指数関数式から導かれるとされ、両者の90%減衰にかかる時間(秒)を比較することで堆積の寄与率が算出されると説明されています。
この手法による結果として、論文は次の数値を挙げています。
| 累積粒子径(µm) | 堆積による90%減衰時間(秒) | 換気による90%減衰時間(秒) | 堆積の割合(%) |
| 0.3 | 222,075 | 638 | 0.29 |
| 0.5 | 97,158 | 638 | 0.65 |
| 5 | 2,144 | 638 | 23 |
| 10 | 683 | 638 | 48 |
| 25 | 148 | 638 | 81 |
| 40 | 68 | 638 | 90 |
| 50 | 48 | 638 | 93 |
| 100 | 15 | 638 | 98 |
著者らは、この手法で算出された堆積割合(%)が手法1の結果とほぼ完全に一致していることを確認し、この一致をもって分析アプローチ全体の妥当性が裏付けられたと結論づけています。
論文の結果からは、次のような実務的な含意が読み取れると考えられます。
次回Part3では、この分析をISO Class 6〜9の各清浄度クラス、およびEU GMPのGrade B/C/DクリーンルームにおけるMCP(微生物保有粒子)の除去割合にまで拡張した、著者らの報告内容を紹介します。
CRSビジネスユニット 三井 晃希
出典 Whyte W, Agricola K. Comparison of the removal of macroparticles and MCPs in cleanrooms by surface deposition and mechanical ventilation. Clean Air and Containment Review. 2018; Issue 35: 4-10.



