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GMPにおける汚染管理

医薬品の製造現場で「汚染管理」という言葉を聞くと、クリーンルームの清掃や消毒を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、業界標準のGMP(Good Manufacturing Practice)を紐解くと、汚染管理はそれほど単純なものではなく、製造のあらゆる要素を横断する考え方として捉えられています。

特に近年は、無菌製造を中心にCCS(Contamination Control Strategy:汚染管理戦略)という概念が重視されるようになりました。

これは「汚染をどう防ぎ、どう検知し、どう改善するか」を体系的に整理し、継続的に運用するための枠組みです。

1. CCSは“書類”ではなく“考え方”

CCSとは、単なる規制対応文書ではなく、品質リスクマネジメントに基づく実践的な仕組みとされています。

対象となる汚染は、微生物、微粒子、エンドトキシンや発熱性物質、化学物質や交叉汚染など多岐にわたります。

これらが「どこから来て、どこを通り、どこに影響するのか」を整理し、施設・設備・人・工程・ユーティリティまでを含めて一貫した管理を行う、という考え方です。

つまり、無菌工程だけを切り取って管理するのではなく、原材料の受入から製品の出荷に至るまでを一本の流れとして捉えることが重要とされます。

2. 汚染を入れないための設計がすでに勝負を分ける

汚染管理は、製造が始まってから対策するものではなく、以下のような要素を考慮して設計段階でどこまでリスクを潰せるかが非常に重要です。

・ 清浄度区分に応じたゾーニング

・ 人と物の動線分離

・ 圧力差や気流の設計

・ 重要工程を人から隔離するバリアの活用

これらはすべて、「汚染が入りにくく、広がりにくい構造」を作るための工夫です。

後工程での清掃や消毒に頼るのではなく、そもそも汚さない設計が、汚染管理の第一歩だと言えます。

3. 清掃と消毒は異なる概念

GMPにおいて、清掃(Cleaning)と消毒(Disinfection)は明確に区別されます。

・ 清掃: 汚れや残留物を物理的・化学的に取り除くこと。

・ 消毒: 微生物数を許容レベルまで低減させること。

この違いを理解せずに運用すると、「消毒剤を使っているから大丈夫」という誤解が生じやすくなり、実際には、汚れが残ったままでは製品の品質リスクが十分に低減されません。

そのため、清掃・消毒方法のそれぞれについて妥当性を検証し、人の接触や汚染濃度、対象表面を考慮した運用が求められます。

4. 環境モニタリングは“異常を早く知る”ための仕組み

汚染管理を支えるもう一つの柱が、環境モニタリングです。

非生菌粒子、浮遊微生物、表面付着菌などを定期的に測定し、結果をトレンドとして評価することが重要とされます。

単に規格内かどうかを見るのではなく、「いつもより少し悪化していないか」、「特定の工程や作業後に偏りが出ていないか」、といった変化を早期に捉えることで、重大な逸脱を未然に防ぐことができます。

5. ユーティリティと人は“前提としてリスクがある”

製薬用水などのユーティリティについては、常に微生物リスクが存在する前提で設計・管理する必要があるとされます。

特にバイオフィルムは、見えにくく、気づいたときには問題が拡大しているケースも多いため、継続的な監視と対策が不可欠です。

また、人は無菌製造において最大の汚染源になり得ます。

そのため、教育訓練、ガウニング、作業動作の管理を「ルール」だけで終わらせず、実際の挙動と結果を結び付けて改善する姿勢が重要とされます。

6. CCSは作って終わりではない

CCSは、工程の立ち上げや初期に一度作って終わりではありません。

逸脱、変更、トレンド、設備更新などを通じて、汚染リスクは常に変化します。

だからこそ、定期的に戦略全体を見直し、「今の管理は本当に有効か?」を問い続けることが、GMPにおける汚染管理の本質だと言えるでしょう。

インテクノスは、製造プロセスの汚染リスクをアセスメントする方法から、制御し維持管理する方法まで、一貫した技術指導を提供しています。汚染管理の設計・運用でお困り事などがございましたら、どうぞお気軽にご相談下さい。

高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

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