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高性能エアフィルタの種類

1. HEPAフィルタとは

HEPAとは「High-Efficiency Particulate Air(filter)」の略称で、空気中の微粒子を極めて高い効率で捕集する高性能フィルタの総称です。一般に“0.3µm粒子を99.97%以上捕集”という表現が広く知られていますが、近年の国際規格では「最も透過しやすい粒子径(MPPS: Most Penetrating Particle Size、概ね0.1〜0.3µm付近)」での捕集効率を基準に性能を評価します。MPPSはフィルタで一番通り抜けやすい粒子径であり、ここで高い効率を満たすほど、より大きい粒子・小さい粒子も実質的に高効率で捕集できるという考え方です。

2. 性能クラスによる種類(EPA / HEPA / ULPA)

2-1. 国際規格での三分類

微粒子用高性能フィルタを大きく EPA / HEPA / ULPA に分け、さらに細かなクラスで規定します。ISO 29463はEN 1822を国際的に整合させた規格で、産業・クリーンルーム用途で広く使われています。

  • EPA(Efficient Particulate Air filter):

HEPAより一段下の高性能領域。粗塵〜準高性能側の最終段として使われることが多いです。

  • HEPA(High Efficiency Particulate Air filter):

典型的な“高性能フィルタ”領域。クリーンルーム、医薬、病院、精密製造、空気清浄など幅広く使われます。

  • ULPA(Ultra Low Penetration Air filter):

HEPAよりさらに上位の超高性能領域。半導体や最高レベルのクリーン環境で用いられます。

2-2. EN 1822 / ISO 29463における代表クラス

規格上の“種類”は、主に捕集効率レンジで決まります。代表的な対応は次の通りです(数値はMPPSでの捕集効率・透過率の目安)。

  • EPAクラス(E10〜E12):

おおむね 85%〜99.5% 以上の範囲で段階化。

  • HEPAクラス(H13 / H14):

H13: 捕集効率 約99.95%

H14: 捕集効率 約99.995%

HEPAと言ってもH13とH14では透過率が桁違いに変わるため、同じ“HEPA”でも用途により実質性能差が出ます。

・ ULPAクラス(U15〜U17):

99.9995%〜99.999995%といった超高効率域で段階化。

3. ろ材(フィルタメディア)による種類

HEPAフィルタの“中身の種類”を決める最大要素が、微細繊維で構成されるろ材です。主に ガラス繊維系 と PTFE系(ePTFE膜など) が二大系統として利用されています。

3-1. ガラス繊維系ろ材

伝統的・標準的なHEPAろ材で、微細なガラス繊維をランダムに絡ませたマット状構造です。

粒子捕集は「拡散」「慣性衝突」「さえぎり(インターセプション)」など複合機構で起き、MPPS付近でも高効率を実現します。

高温耐性や実績の多さから、医薬・ライフサイエンスなどでは依然主流とされています。

留意点として、湿度や水分に弱い設計だと性能劣化や圧力損失増加が起こりやすいこと、取り扱い時に繊維損傷が起きやすいことが指摘されています。

3-2. PTFE系ろ材(ePTFE膜など)

多孔質のPTFE膜やPTFE複合材をろ材として用いるタイプです。

同等効率を出す場合、ガラス繊維より圧力損失(初期抵抗)が低くなりやすく、省エネ運用に寄与するとされています。

耐湿性・耐薬品性・耐腐食性に優れ、高湿環境や腐食性ガス雰囲気での使用に向くとされます。

留意点として、製造コストが高くなりやすいこと、用途によっては必要以上の性能になってしまうこともあり、環境条件とコストのバランスで選定されます。

4. プリーツ構造(折り方)による種類

HEPAフィルタは、ろ材を折り畳んで表面積を稼ぐ“プリーツ構造”が基本です。主にディーププリーツ(セパレータ付き) と ミニプリーツ(セパレータレス/細線セパレータ) に大別されます。

4-1. ディーププリーツ

プリーツの間にアルミや紙などのセパレータを挟み、折り山間隔を大きく保つ方式です。

高温環境や大風量用途で形状安定性が高いとされます。

ただしセパレータ分だけ体積・重量が増し、同寸法なら表面積はミニプリーツに劣りがちです。

4-2. ミニプリーツ

セパレータを使わず、熱溶着ビードや細線で間隔を確保しながらプリーツを高密度化する方式です。

同じ外形でより大きなろ材面積を確保でき、低圧損・コンパクト化に有利とされます。

一方で、極端な高温や乱暴な取り扱いではプリーツ変形リスクがあるため、環境条件に注意が必要です。

5. フィルタ形状・実装方式による種類

用途側から見た“HEPAの種類”として、形状・実装方式も重要です。次のような区分が一般的です。

5-1. パネル型(フラット/ボックス型)

空調機・空気清浄装置・機器内最終段などでよく使われる標準的形状です。金属や樹脂フレームにプリーツパックを固定し、ガスケットでシールします。

5-2. Vバンク型・大面積型

プリーツをV字状に配置し、同じ設置面積で表面積を大きくするタイプです。低圧損で長寿命化しやすく、大風量空調や省エネ用途に向きます。

5-3. 円筒・カートリッジ型

掃除機、局所排気、産業用集塵などで使われることが多い実装形状です。装置側の構造に合わせ、交換性を重視した形が選ばれます。

6. リーク試験・評価方法の違い

国際規格では、HEPA/ULPAは捕集効率だけでなく「局所漏れ(リーク)」も厳密に評価し、クラス分けに含めます。

具体的には、MPPSでの捕集効率測定、フィルタ全面スキャンによる局所漏れ試験、圧力損失測定、といった複数試験で“本当に規格通りの性能か”を確認します。これにより、ろ材性能が高くてもシール不良や製造ムラでクラス不適合になる可能性が排除されます。

7. 用途別にみた代表的な選び分け

用途と種類の結びつきを簡潔にまとめます。

  • 一般的な空気清浄/建物空調の最終段:

H13が多い領域。圧損とコストのバランスが重要です。

  • 医療/製薬/高清浄度室:

H14が選ばれやすい領域。リーク管理と安定性が重視されます。

  • 半導体/超高清浄クリーンルーム:

ULPA(U15以上)が中心。微粒子許容量が極小の工程で使います。

  • 高湿/薬品雰囲気/省エネ重視の産業現場:

PTFE系ろ材やミニプリーツ構造が有利になりやすいです。

  • 高温/大風量/機械的安定が最優先の現場:

ディーププリーツなど形状安定性を優先した設計が合致しやすいです。

このように、HEPAと一言にいっても様々な種類が存在し、EPAやULPAなどの選択肢も含めて検討しなければ、フィルタシステムの最適化は成し得ないのです。

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高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

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