技術情報
2026.01.19
油圧機器や潤滑設備の世界では、“油は人でいう血液”と言われて大切に扱われてきました。でもここでいう「油が良い状態」というのは、粘度や添加剤だけではありません。目に見えない微粒子(コンタミ)をどれだけ含んでいるかが、機械の寿命に直結することが分かっています。
たとえば油が透明に見えても、実は微細な粉塵や摩耗粉が混ざっていることがあります。そうした粒子は、ポンプやバルブの隙間に入り込んで摩耗を進めたり、流路を詰まらせたりして、トラブルの原因になるのです。
そこで登場するのが ISO 4406 です。これは一言でいうと、液体中の固体粒子汚染レベル(清浄度)を、共通のルールでコード化して伝えるための国際規格です。
ISO 4406は、測定結果を 「XX/XX/XX」 の3つの数字で表します。この3つの数字が示しているのは、100mL中に含まれる粒子数(粒子濃度)を、粒径別に区切って“等級”として表現したものです。
対象となる粒径は、次の3つです。
≧4 µm / ≧6 µm / ≧14 µm
そして、たとえば「19/17/14」というコードで表示されたときは、それぞれの粒径ごとに「その数字に対応する範囲の粒子数レンジに入っています」という意味になります。
ここで大事なのは、ISO 4406の数字は“1ずつ増えるだけ”に見えて、実は軽い変化ではないことです。ISO 4406は対数スケールで、コードが1増えると粒子数レンジが概ね2倍になります。
つまり「18が19になっただけ」ではなく、コンタミが一段階ガツンと増えた可能性があるわけです。
ISO 4406が3つの粒径を見ているのは、粒子サイズによって起きる問題のタイプが違うからです。
一般にはざっくりこのようなニュアンスで語られます。
小さい粒子(≧4 µm、≧6 µm):
バルブやポンプのクリアランス(隙間)に入り込みやすく、摩耗や作動不良につながりやすい。
大きい粒子(≧14 µm):
目詰まりや重度汚染、部品摩耗の進行を示すサインになりやすい。
この3点セットで見ることで、「細かい汚れが増えてきているのか」「大きめの摩耗粉が出始めたのか」といった状態の違いが見えやすくなる、という考え方です。
ISO 4406は、油圧機器があるところならほぼ出番があります。特によく挙げられる代表例は、油圧システム(建設機械、産業設備など)、潤滑管理(ギヤボックス、軸受、循環潤滑系)、オイル&ガス/プロセス産業(プラント設備など)のような分野です。
理由はシンプルで、油圧や潤滑は「圧力」「精密隙間」「長時間運転」が絡むので、ちょっとした粒子でも性能劣化につながりやすいからです。
さらに、油圧トラブルの主要因として“汚染”が非常に大きな割合を占めるという調査結果も多数あります(※数字の厳密性は資料によって差がありますが、汚染が主要因ということは共通です)。
ISO 4406は、単に“今の汚れ具合”を言い当てるだけではなく、フィルタや清浄化対策が効いているかを確認する指標としても使えます。
たとえば、フィルタを交換した、摩耗粉が出そうな使い方をしている、立ち上げ直後に一時的に汚れが増えるといった現象は、粒子数の変化として出てきます。
ISO 4406コードなら、報告書や現場の会話で「前回より 19/17/14 → 18/16/13 に改善しました」のように短く伝えられます。
ここは誤解されがちなポイントですが、ISO 4406はあくまで粒子の“数”と“サイズ分布”の話です。汚染物の元素や材質を特定するわけではありません。
つまり、砂なのか、金属摩耗粉なのか、樹脂粉なのかまでは分かりません。そういう「正体」を知りたい場合は、別の分析と組み合わせる必要があります。
ISO 4406を一言でまとめると、油の中の微粒子汚染を、3つの数字で共通言語化する仕組みです。
見た目では判断できない汚れを、数で管理できるようになることで、機械を守る、フィルタの効果を確認する、目標清浄度を決めて運用する、といった保全・品質管理が回しやすくなります。
もし報告書で「18/16/13」などの数字が出てきたら、それは“油の透明度”ではなく、油圧機器や潤滑設備の内部に潜むリスクを数値化した結果だと思って見ると理解しやすいです。
インテクノス・ジャパンは、潤滑管理やオイル清浄度の適正化を技術的にサポートし、顧客企業の製品品質や生産効率の向上を支えています。機械故障や品質トラブルに課題をお持ちの際は、いつでもお気兼ねなくご相談下さい。
高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―


