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FC(燃料電池)の異物問題と対策

FC(燃料電池)では「異物(粒子・繊維・金属粉・凝集塊など)」が、初期不良と長期劣化の両方を引き起こし得るため、工程設計とシステム設計の両面で“入れない・発生させない・溜めない・早期に見つける”の考え方が重要です。

1. 異物が問題になる理由(どこで何が起きるか)

異物は、(a) 膜電極接合体(MEA)内への混入、(b) スタック流路・周辺配管への堆積、(c) 冷却回路への循環混入、の3系統で影響が出やすいです。MEAに粒子が噛み込むと、局所的な応力集中や膜のピンホール、局所発熱(ホットスポット)につながり、ガスリークや性能低下の誘因になります。また、流路側に堆積すると圧力損失増大や加湿状態の偏りを招き、結果として乾燥/フラッディングの局在化を助長します。さらに冷却回路では、粒子がポンプ・バルブ等の摺動部摩耗を進めたり、スタック周辺で堆積して熱交換や流量分布を乱したりします。

2. 異物の主な発生源(製造起因と運転起因)

製造起因では、(1) 触媒インク中の凝集塊(分散不良)、(2) コーティング/乾燥/ラミネーション時の粉塵・繊維、(3) ガスケット・シール材のカス、(4) 金属部品の加工粉やバリ、(5) 搬送・保管時の包装材由来の微粒子、が代表例です。ロールtoロールの量産工程では「搬送・乾燥・積層・検査」を連結するほど、工程間での汚染リスクも増えます。

運転起因では、(1) 吸気側からの塵埃、(2) 周辺機器(コンプレッサ等)由来の摩耗粉、(3) 冷却回路内の腐食生成物や析出物、(4) 配管内の剥離物、が典型です。加えて“粒子”だけでなく、冷却水や空気由来のイオン等の混入は膜や電極界面の挙動に影響し、性能と耐久性の面で無視できない汚染要因として扱われます。

3. 対策の柱(工程側:入れない・発生させない)

3-1. 清浄環境の設計と維持:

異物低減の基本は、クリーン環境の施設設計、気流・差圧管理、清掃性の高い内装、入退室・更衣・搬送ルール、粒子数のモニタリングです。国際的にはISO 14644系列が、清浄度の考え方(粒子濃度の測定、設計・運用・検証)を与える枠組みとして参照されます。

また、清浄度は「作ったら終わり」ではなく、設備状態や作業実態で変動するため、粒子カウンタ等による環境モニタリングを継続し、逸脱を早期検知して是正する運用が推奨されます。

3-2. 材料・部材の前処理とハンドリング:

粉落ちしやすい包装材の見直し、部材の洗浄・粘着クリーニング、保管時の密閉、作業台や治具の低発塵化など、地味ですが効く対策が多いです。特に積層(ラミネーション)前後は異物が欠陥化しやすいので、施設自体や前後工程に「持ち込ませない関所」を設ける発想が重要です。

3-3. インク分散・塗工品質(凝集塊=“内部異物”対策):

触媒層は微細構造に依存するため、分散不良による凝集塊は“見えない異物”として性能ムラや劣化の芽になります。工程側では、分散条件の最適化、ろ過(インクフィルタ)、塗工欠陥のインライン検査などの組合せが現実的です。

4. 対策の柱(システム側:溜めない・守る)

4-1. 冷却回路:粒子除去+イオン管理:

冷却系は「粒子」と「イオン(電気伝導度)」の両面管理が語られます。一般には冷却回路中の粒子を除去してスタックや回路部品を保護する粒子フィルタ、伝導度を許容範囲に維持するためのイオン交換型フィルタ(樹脂)といった構成が示されています。現場的には、粒子数や圧損上昇(目詰まり)や伝導度上昇をトリガに交換・整備する設計が取りやすいです。

4-2. 燃料品質:規格要求とフィルタリングの考え方:

燃料側の“異物”は粒子だけでなく、触媒毒となる不純物(硫黄系、CO等)も含めて管理されます。水素燃料の品質は国際規格で要求項目が整理されており、供給インフラ~車載/設備側で「規格適合を前提にしつつ、入口側で最終防衛する」という二段構えが現実的です。

5. おわりに

異物問題は、単一対策で解けるというより「製造(入れない)×システム(守る)×監視(見つける)」の組合せで、欠陥の発生確率と影響度を同時に下げるテーマです。上記の枠組みで、現行の工程・回路に当てはめてギャップを棚卸しすると、改善課題を抽出できるかもしれません。

インテクノスのコンサルティングでは、このような異物問題やそれによる歩留まりへの影響・欠陥率の低減といった課題をお持ちの顧客企業に、対策の実装・評価・維持までを支える専門性の高い技術支援を提供しております。改善を要求されている、又はこれから工程を立ち上げるといった際には、是非ご相談下さい。

高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

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