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素粒子の世界は“見えないもの”を測る技術でできている、という話

「素粒子」と聞くと、難しい数式や巨大な研究施設を思い浮かべる方も多いかもしれません。ですが実際の素粒子研究は、突き詰めるととても素朴で、「とにかく小さすぎて見えないものを、どうやって確かめるのか」という挑戦の積み重ねです。

素粒子とは、ざっくり言えば“物質をこれ以上分けられない(と考えられている)最小単位”のことです。そしてその素粒子の性質を調べるには、まず素粒子を作ったり、飛ばしたり、ぶつけたりする必要があります。ここで登場するのが、いわゆる粒子加速器です。

まずは「加速して、ぶつけて、反応を見る」という基本構造です

粒子加速器は、電子や陽子などの粒子を光速に近い速度まで加速し、標的に衝突させたり、粒子同士を正面衝突させたりして、そこで起きる反応を観測する装置です。

加速器と聞くと本体だけが注目されがちですが、実際には周辺機器も含めた“システム全体”で動いています。たとえば、粒子を通すためのビームライン、真空を保つチャンバー、マイクロ波を導入するための導波管など、細かい要素技術が集まって成立しています。

また、加速方式にもいろいろあり、直線的に加速する方式や、円形に回しながら加速する方式(サイクロトロン、シンクロトロンなど)などが存在します。研究目的や施設の条件に応じて最適な形式が選ばれるわけです。

観測は「光に変換して読む」ことが多いです

素粒子は基本的に直接“目で見る”ことはできません。そこで重要になるのが、粒子が検出器に入ったときの反応を、別の形の信号に変換する技術です。

代表例がシンチレーション検出です。これは放射線や粒子が物質に入射したときに生じる微弱な光(シンチレーション光)を取り出して測る方法です。検出器紹介は、蛍光体結晶(シンチレータ)と光センサー(光電子増倍管や半導体光センサー)を組み合わせる構造が基本になっています。

最近では、光電子増倍管だけでなく、SiPM(シリコン光電子増倍)のような半導体ベースの光検出素子と一体化した検出器も増えているようです。こうした方向性は「小型化」「高耐久化」「取り扱いの容易さ」につながり、研究用途だけでなく実装面でもメリットがありそうです。

“測れるかどうか”を決めるのは、最終的に信号処理です

検出器で光や電荷として信号が出ても、それを正しく読み取れなければ意味がありません。高エネルギー物理の世界では、事象が一瞬で起こるうえにデータ量が非常に大きくなるため、計測系の性能が研究の進み方そのものに影響します。

近年の実験ではデータレートが非常に高くなり、10Gbpsを超えるような環境も“普通に”なってきている、という課題意識が示されています。つまり、素粒子研究は物理だけでなく、データ取得と処理の戦いでもあるわけです。

また、加速器やビーム診断においてサブナノ秒精度のタイミング同期やRF周波数配信、ビーム位置モニタ(BPM)などが重要技術として挙げられ、「タイミングを制する者が実験を制する」とも言えるかもしれません。

“素粒子研究”は宇宙の謎にもつながっています

素粒子は研究室の中だけの話ではなく、宇宙そのものの理解にも直結します。たとえば、暗黒物質(ダークマター)やニュートリノ、粒子の質量の起源などは、素粒子物理学の大きなテーマとして語られています。

計測に関しても、こうした「宇宙の根本に迫る問い」が研究を押し進めていると言われており、素粒子の話は難しい一方で、“根源的な好奇心”が原動力になっている分野です。

さらに大学系の研究組織では、高エネルギー天文学向けの検出器開発なども進められており、地上実験だけでなく宇宙観測ミッションにつながる文脈も見えてきます。

量子ドットのような「ナノ材料」は、素粒子そのものではありませんが

ここまで素粒子の話をしてきましたが、少しだけ視野を広げると、量子ドットのような「ナノ材料」も“量子のふるまい”を扱うという点で近い世界観を持っています。

もちろん、量子ドットは素粒子そのものを直接扱う技術ではなく、主に半導体の性質を利用した材料分野の話です。ただ、サイズがナノ領域まで小さくなると量子効果が目立ってきて、光の吸収や発光の性質が変化します。こうした「ミクロな世界のルールが、マクロな性質として現れる」という感覚は、素粒子研究にもどこか通じるところがあります。

つまり、素粒子研究が“自然の最小単位を探る話”だとすると、ナノ材料は“量子の性質を工学的に使う話”で、同じ量子スケールの延長線上にあるものとして眺めると面白いです。

また最近は、こうしたナノ材料や量子状態の性質を活かして、磁場などを高感度に測る量子センサのような分野にも応用が広がっているようです。

さらに同じ量子技術の延長として、量子状態を計算に利用する量子コンピュータの研究も進んでおり、「量子の性質をどう扱うか」という意味では共通する話題として眺められます。

おわりに:たまにはこういう話もいかがですか

素粒子は見えません。触れません。しかも一瞬で消えます。

それでも人類が素粒子を調べられるのは、

・ 粒子を加速する技術

・ 粒子を検出する技術(光に変える、電気信号にする)

・ その信号を超高速で読み取って同期させる技術

こうした“総合技術”が積み重なっているからです。

筆者は普段、マイクロ/ナノスケールの微粒子汚染制御や清浄度管理技術の話ばかりしていますが、肉眼で見えない粒子を測るといった点では相通ずるものがあります。

たまにはこういう未知の領域に想いを馳せてみても良いかなと思い、調べながら書いてみましたが、いかがでしょうか。

素粒子の世界はまだ解明されていない部分が非常に多いそうですが、それでも確かに心ときめく領域で、いずれ当社の技術ともつながり得る領域なのだと、そのような豊かな未来を目指す未知への探究に貢献できるよう研鑽を重ねていきたいと、そう想っております。

高木 篤 / コンサルティングTOPチーム ― TOBIRA ―

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